エンジニアの求人や採用について調べていると「SES」という単語を目にすることがあるでしょう。
SESはIT業界特有の契約形態の一つであり、よく派遣契約や請負契約と間違われます。
しかし、正確には異なる契約形態であり、SESの契約形態をしっかりと理解している方はそこまで多くありません。
そこで、この記事では、SES契約の特徴や派遣契約と請負契約との違いなどを解説します。
そもそもSES契約とは?
SESとは、「System Engineering Service(システム・エンジニアリング・サービス)」の頭文字を取った略称で、業務委託契約の一つです。
主にシステム開発の場面で用いられる契約形態であり、エンジニアをあらかじめ定めた期間クライアント企業へと派遣し、その企業に常駐しながら技術サービスを提供するというのが特徴です。
クライアント先で常駐して仕事をすることは、派遣契約や請負契約においても同じ業務環境になることはあります。しかしSES契約では、指示系統がクライアントではなく、雇用者(SES企業)側にあります。
SES契約の最大のメリットは、自社の事業にマッチするエンジニアを見つけやすく、エンジニアの育成にかかるコストや時間を削減できることが挙げられます。
契約内容
SES契約の多くが業務委託契約として結ばれます。
業務委託契約には、請負契約・委任契約・準委任契約の3つに分類されますが、SES契約は準委任契約に該当します。
それぞれの契約は内容が異なり、請負契約は「仕事の完成を目的」とした契約であり、委任契約は「法律行為について相手側に委託し、これを承諾すること」で生じる契約です。
準委任契約は、「仕事の完成を目的せず、一定の業務」を行う契約であり、進捗状況に応じて報酬が支払われるという特徴があります。
そのため、受託者側は委託された業務が完了しなくても報酬を受け取れる権利があるのです。
報酬体系
SES契約の報酬は、作業時間に応じて発生します。一般的には1か月あたりの総量で決まります。
これを「人月単価」といいます。この人月単価は、エンジニアの経歴や経験、保有スキルなどによって大きく変動します。
また、どのポジションのエンジニアかにもよって変わり、人月単価50万円の方もいれば、100万円を超える方がいるなど、さまざまな人月単価があります。
責任の範囲・対象
準委託契約であるSES契約は、成果物に対する責任はありません。
契約内容はあくまで「一定の業務」なため、業務を遂行した結果、完成していなくても問題はなく、また、完成品に不備があった場合でも修正する義務はありません。
万が一、修正業務を行う場合は、修正業務の労働時間分の報酬が発生します。
ただし、定められた労働時間の中で、クライアントの期待値以上の成果を出せば、信頼度や単価向上にも繋げることができます。
SESは、完成までの責任はなかったとしてもビジネスにおいての信頼関係を構築し、いい取引を続けていくために業務遂行能力は大切なポイントになります。
指揮命令系統
指揮命令に関しては、エンジニアを抱えているSES事業会社から出す必要があります。企業から指揮命令を出すことは派遣契約と同じになってしまい、それは法律違反を意味します。
業務だけではなく、休日出勤や残業などの指示も同様に、SES事業会社から指示命令を出す必要があります。
しかしSES会社はさまざまなエンジニア、そしてSIerなどと仕事をしており、常識の範囲内での対応・調整はエンジニアと相談可能なため、コミュニケーション面での不安は解消しやすいといえます。
SESと派遣・請負契約との違いは?
上記でもお伝えしましたが、SES契約と似ている契約形態として、「派遣契約」と「請負契約」が挙げられます。
しかし、これらは似て非になる契約形態で、雇用形態や指揮命令権限など違いがあります。
これらを誤って認識してしまうと知らないうちに法律違反・契約違反となってしまう場合があるので、注意が必要です。
ここでは、SES契約と派遣契約・請負契約との具体的な違いを解説します。
SESと派遣の違い
SES契約と派遣契約は、エンジニアがクライアント先に派遣するという部分は同じですが、決定的な違いは、指揮命令権限の違いが挙げられます。指揮命令権は発注元であるクライアント企業にある派遣契約に対し、SES契約の指揮命令権はSES企業・雇用者にあります。
SES契約は、「技術力の提供」が契約内容であり、クライアントが求める技術者のアサインが主な業務になります。そしてクライアント企業が指揮命令を行ってしまうと契約違反となるので、注意が必要です。
また、成果物に関しては、SES契約と派遣契約のどちらも責任を負う必要はありません。
SESと請負の違い
請負契約は、受託者が委任された業務を完成させるまで携わる契約です。
委任された業務を完成させる責任があり、独自の裁量と責任をもって求められた成果物を納期内に納品す
る義務があります。
SES契約との大きな違いは、請負契約の場合、指揮命令は受託者にあり、支払いの対価が「労働力」ではなく、「成果物」にあるということが挙げられます。
そのため、成果物が完成しなければ報酬を得ることができず、欠陥や修正箇所があった場合は対応することが必要です。
また、成果物の完成度によっては賠償責任が生じる場合があるため、発注側と受注側双方である程度の覚悟が必要な契約形態といえます。
派遣と比較したSESの企業側のメリット・デメリット
派遣契約とSES契約を比較した場合は、企業側にどのようなメリットとデメリットがあるのか気になる方もいるでしょう。
具体的なメリットとデメリットは、下記で詳しく解説します。
メリット
SES契約の最大のメリットは、「案件に応じて必要なスキルを持つ人材を集めやすい」ということが挙げられます。
また、指揮命令は雇用者になるSES企業にあるため、エンジニアは常駐先企業の指示を全て受ける必要がありません。
さらに、成果物に対する責任がなく、時間によって報酬を請求できることもメリットとして挙げられます。そのため、SES企業そして働くエンジニアとしては、業績や結果に関係なく時間給で安定した収入を期待することができます。
デメリット
一方デメリットとして、いまだにSES契約と派遣契約の区別ができていない企業も少なくありません。
そのため、指揮命令の権限がないにも関わらず、常駐先から指示を受け、無茶な仕事を押し付けられる場合もあります。しかし、そのような場合は、契約違反となり、それ相応の対処をすることが可能です。
SES契約をする場合は、双方がしっかり理解しているか確認することが肝心でしょう。
SESと比較した請負契約における企業側のメリット・デメリット
一方で、SES契約と請負契約と比較し、企業側にとってのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
SES契約のメリットは、上記でも説明した通り、労働力に対して報酬が支払われるということが挙げられます。
完成物の進捗状況に関係なく、時間に応じて報酬を請求することができます。
また、成果物に対する責任もなく、SES契約では責任範囲が狭いにも関わらず、安定した収入を期待することができます。
デメリット
最大のデメリットとしては、SES契約だとしても成果物の期待をされることが挙げられます。
常駐先で成果物の完成などの責任はありませんが、適切な人材・技術のある人をアサインしているため期待されます。成果物への責任はなくとも、的当にやることは、エンジニアとの契約期間だけでなく、SES会社としての評価にもつながるため許されません。
請負契約は完成してはじめて報酬が発生することに対し、SES派遣は時間で報酬が発生しますが、しっかりと業務を遂行し、請負契約よりも効率よく完遂することが必要です。
SESのサービスでは偽装請負に要注意
SES契約で、注意しなければならないことが「偽装請負」です。偽装請負とは、労働者派遣に該当するものの、業務委託を偽装して行われるものをいいます。
SES契約における偽装請負で、最も多いのが「SESを準委任契約として扱わない」というパターンが挙げられます。
上記でも解説しましたが、SES契約はクライアントに対し、「人月単価」で労働力を提供する契約形態です。
そのため、業務の指示や勤怠管理はクライアントが行うことができません。しかし、SES契約と派遣契約の違いを理解していない方も少なくなく、業務の指示や残業の要求などをされることがあります。また、製品を完成できなかったという責任を押し付けることもあるようです。
このような場合は、偽装請負であり契約違反にあたるため、法的措置が必要です。
こういった偽装請負が常態化している常駐先は、クライアントとSES企業双方にモラルが欠けているため、注意しておくことが大切といえます。
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